すきなものだらけ@いくつもの沼の底から

Twitterで書き切れないようなことも。育児、映画、ドラマ、音楽。

哀愁しんでれら

哀愁しんでれら、公開翌日の土曜日に見てきました。

後半はネタバレしておりますが
前半は、本編の細かいシーンには触れず
フィルマークスへ書いたレビューを
少し書き直したものから始めます。

長いです!!!


映画『哀愁しんでれら』の感想・レビュー [1222件] | Filmarks
https://filmarks.com/movies/90775


次々と不幸に見舞われた女性が凶悪事件を起こす。と予告やフライヤーからは読めなくもないけれど
彼女が起こす「事件」の原因は続けざまに起きた不幸ではなくて、「シアワセ」を手に入れたから…だった?

もっと胸糞悪い気分になるかと期待?覚悟?していたけれど、そんなことはなかったです。
でもそれもまたある意味怖い部分かもしれないです。

幸せ、と言っても彼女が願ったのは本当はおとぎ話のお姫様のような暮らしではなくて、もっとささやかなものだったと思います。

劇中に出てくる大人も子どもたちも、好きな人や親に大事に思われたい、構ってもらいたいという気持ちがあるし
逆に、その想いが強いあまり、行動が行き過ぎてしまうことがあって

そんな誰しもがもつ当たり前の感情から始まっているから、彼女や彼らが一概に「狂っている」「狂ってしまった」とは思えないような怖さがあります。

誰かを騙すつもりもない、貶めるつもりもないけれど、結果として追い詰めるようなことってきっとあるし
例えば過去にうけた傷に原因があったとしても、だからと言って許されない行動もある

どこかで間違ったのではなくずっと少しずつおかしかったかもしれない、
そうするとそれを断ち切ることの難しさも感じて頭を抱えてしまうような。

あのときのセリフ、この行動が重なっていくというシーンがいくつかあって、これは繰り返し見て噛み締めたいと思いました。

観てからずっとぐるぐると考えが回っていて、今ここに書いていてもまとまっていないのは自覚があります(笑)

でもまさに、そういう映画だと思います。
自分も人として、娘として、
そして親として、妻として
彼女と全く違う人間だと言いきれるのかと思わされました。




それから自分のTwitterからの引用






**

さてネタバレパート行きます!
パンフレットも読んでその部分にも触れますが、監督インタビューはある意味「答え合わせ」になっているので
書いてあることについては読んだ人だけわかる程度に留めたいと思います。


小春のこと。
母親が出ていったこと、振り払われた手の記憶は彼女の傷に間違いないんだけれど、
お父さんは一生懸命小春たちに愛情を注いで育ててきたことは伺えるし、
裕福ではなくても、妹は反抗的なとこもあっても、それなりに仲良くつつましく生活していたように思える。
それはけっして不幸ではない。

「母親がいないだけ」で、どこにでもある「普通」の家庭だと思えました。
仕事も上手くいかないこともみんなあるし(彼女の場合は私情が強すぎる所は否めないが)

モンペのニュースを見て「バカな親」と思う瞬間あるよね。
モンペは恥ずかしいし最悪だし、
虐待はしては行けないことだってみーーーーんなわかってんの。
当たり前のことだもんね。

手をあげる親なんて最低。
子どもを捨てる親なんて最低。
みんなそう思ってるでしょう。

小春の表情が変化していくのが見事だったし、衣装がそれをより引き立てていました。
結婚後、これまでの服を捨てて新しいものをクローゼットに揃えていく姿、私は彼女の何か大事なものが無くなった気がして、怖かった。
新調したベッドカバーやインテリアも。

でも小春はきっと「新しい気持ちで」「大悟にふさわしい妻、そしてヒカリのために良い母になる覚悟」のようなものだったのでしょうね。

ところで彼女を次々と襲う不幸はもっと深刻に不幸なのかと思いきや、ちょっと笑えてしまうという不思議さでしたw

家も、居住部分は無事だったし。

そして、それらをすべて綺麗に解決してくれる大悟さん。
そりゃあ家族にも感謝されるし信頼もされますよね。

さて、大悟。

自分を助けてくれた小春をもてなし、困っていることをすべて解決してくれたのも
きっと下心などなく、純粋なお礼の気持ちだったんでしょう。彼は「お金は潤沢にあった」。

そして自分が自分のために若い妻と再婚しよう、などと言う欲望からではなく、
ヒカリを愛しているからこそ、ヒカリがママとして認めた小春を迎えた。

完璧なんですよね。
でも「良い母」を小春に求めすぎる姿は最初からちょっと怖い。

お母さまと初めて会う場面、まるでイヤミな姑みたいに思うけどよっぽどお母さまの方が普通の感覚に思える、あとから考えれば。
私が「母」だからなのか。

ただ、そのお母さんももちろんやってはいけないことをしている。
ここは後述します。

さて。予告で見た「食うことしか頭にねぇのかよ!」と叫ぶシーン、田中圭芝居好きとしては
キターヾ(°∀° )/ー!

なんだけど夫としては「クソモラハラ男じゃん」っていう第一印象でした。
監督はあの予告が公開されたあと「モラハラでは無い」とおっしゃってたけど

https://twitter.com/RyoheiWatanabe/status/1331061040449163264?s=19

映画を見たあとでもやっぱモラハラだと個人的には思います。
パンフで監督が大悟の周りを巻き込んでしまう性質について話しているけど
それもまさにモラハラ野郎の特徴じゃないかと思ってしまった。
本人全く悪いと思ってないし、自分が正しいと思ってるとこね。

妹は気づいたよね。
「お姉ちゃん大丈夫?」って言ってた。

話は逸れますが。
この映画を語る時に無視できなかったので書きます。


私の身近な人が、モラハラ夫から受けてきた苦しみにある時目が覚め、子どもを連れて逃げました。
初めは、その男はそれほどの仕打ちを(手はあげない、肉体的なDVはほぼない)
何故平気で出来るのか理解が出来なかったのですが
モラハラ被害者の方が「モラハラとは」をまとめたblogをたまたま拝見し、あまりにも当てはまる特徴に驚きました。

本人はとてもそんな事を考える余裕は無い状況だったので、私よりも彼女に近い立場の人にそのサイトをみせてみると、やはり同じ印象を持ったようでした。
その後おりに触れて聞く、いわゆるモラハラ夫の特徴を持つ人というのは、生い立ちや普段の生活、職業や社会的な立場、性格も全く違うはずなのに、
モラハラ行為のパターンは数通りの組み合わせ程度でかなり似通っていて。

(ここでは私の身近な人を見てきて「夫」としますが当然逆もあると思います)

大悟さんが、ヒカリを第一に愛していて大切で、この人なら母親としてふさわしいと妻として迎えたのも本心なのでしょう。
(ちなみにこの点、小春を女性として心から愛していたかはちょっと微妙かもしれない。)

ただ、普段は世間的にも信頼があって、問題ない素敵な人であるというのも間違いはなく、
自身のトラウマから手を上げてしまった小春を責めたてたのも、ヒカリを思うからこそ…
ヒカリのことならばきっと何でもするタイプの人。

理解はできますが、でもやっぱりあそこまで行くことはおかしい。
彼のその行動の素因が過去にあるとして、それを家族になった小春がすべて受け入れることは
本当はしなくてもいい。

彼のことを理解したい、受け止めたいと思ってしまうタイプの子が、
こういう人に取り込まれてしまう事があるから観てて辛かった。

確かに小春はしてはいけないことをした、
特に大悟にとってはヒカリに対して1番して欲しくなかった行為かもしれない。
それほど大きなことだったけど、それが無くてもきっと大悟は
もっと小さなことを積み重ねて小春を追い詰めていったと思ってる。

前の奥様、そこから逃げたんでは無いのか、とまで思ってしまうわけです。

もちろん大悟にも同情します。
いじめのこと、
大人になっても後遺症が残るほど強く母親に殴られたこと。
それは学校での問題以上に辛い出来事だったかもしれない。

ただそのことについても
大悟の子育てに悩み行き詰まり、ほとほと疲れきった母親の姿も浮かんでしまうというループ。

また隙あらば自分語りするけど
不登校児に向き合うのってめちゃくちゃ消耗しますね…
どこで折り合いをつけるのか本当に難しかった。
ウチはその時は長期化しなかったけれど、今後もまだわからない。

あそこまで強く手をあげた大悟の母は許されないでしょうが、子どもに手をあげたくなる瞬間なんて正直イヤになるほどあるんです…
だから紙一重なんです

実際に大悟も手をあげそうになった。
それはよく言われるような、母親の虐待の連鎖、ではないかも。
少なくとも大悟のお母さんは日常的に暴力を奮っていたようには思えないし、
大悟は誰よりもそれはしたくなかったはず…

初デートでストローぎゅっとするのめちゃくちゃ可愛いけど、ズズっと啜ったりするの実は行儀悪いよね。
あれほど「バカな他人」に厳しく完璧そうな大悟がやるっていうのが。
彼の幼児性(インナーチャイルド)も出てるかもと思ってる…

…けど、圭くんが狙ってたかどうか演出かどうかはわかんないよ!😂
あのシーン可愛いからその時は全くそんなこと思わなかったんだけどね、ふと。

あーまとまらんw

それにしても、大悟もここまで1人で幼児期を育ててきたことに自信を持たんかい!!
いつまで母親が必要って幻想に囚われてるんじゃ。
(まぁここが彼の闇なんだけど)

幼児期と学童期はまた全然違う。
人間関係が複雑になり、子どもの心理もどんどん読めなくなる。
手は離れるけど見えないことも増える。

親の知らない顔がどんどん増えていく。

学校での問題が起きたとき
被害者なのか加害者なのか
子どもを信じるのか信じられるのか
真剣に思えば思うほど何が正しいのかすごく難しい。

大悟自身の過去も思い出していたかもしれない。


ヒカリ

もっと難しく複雑な子かと思ったけど実は意外に単純なのかも。

パパと約束していた食事(ふつー子どもがそんなに好む食べ物とは思えないのがすごい)
突然知らない女の子が一緒になったのに、きっかけがあったとはいえすぐに懐いて、可愛いよね。

眼帯に小春が突然目を書き入れた時、私はいきなりそんなことしていいの!?って思ったけど喜んでたしw


小春は、単純にヒカリとの約束を破ったことが良くなかった。それはダメ。

そうは言っても子育てにおいて大悟には相談すべきことも含んでたから仕方ないけど、
絶対聞かれちゃダメだし、内緒って言われてるんだけどって言えぃ!!

ただ、親だって間違うこともあるって、K2で黒木が言ってた(私の大好きなセリフ)

私も、途中までヒカリは継母に意地悪したいパターンなのかと思ってました。
が、小春が出ていった時にママ!と縋り付く姿と表情をみて、これはちがうのかなと感じた
(この辺はパンフで監督が話してますね)

お風呂で小春の身体に触れるところや
デッサンシーンで愛しそうに胸に顔をつけるあたりは、母親というものを求めていたんだろうなとは思いました。

それから、家族になった後の「試し行動」も大悟の言う通りあると思います。
それに慣れてきたからこそ反抗もするし言うこともきかなくなるわな。

でも大悟もそこはフォローしろやと思いました(怒)

ここまでは家の顔。

学校では全然違うよね。
これもあるあるよね。

小春が言っていた「好きな人にいじわるされたかった」
もう「好きな子をいじめる」ってその概念も無くしたい時代だなーとは思ったけど、
それももちろんわかります。
構われたくてちょっかいを出す。

構われたかったヒカリは、それを酷い方法で試してるんだよな…
やった後のことを考えられてない気がする。
幼すぎる。(何のせい?誰のせい?)

本当に突き落としていたらもちろん犯罪なのだけど
そうでなくても死んだ同級生に「あの子自身のせいだ」と言いきれる思考をもつ低学年の子はちょっと怖い。


それにしても、子どもはそもそも思うようにならないのに、理想を押し付けるつもりはなくても
「こうあってほしい」と小さいことも思ってしまうし、しつけひとつも本人のためなのか、
自分の為なのか、
他人の目を気にしているのかわからなくなる時もある。

大悟をモラハラだと言ってしまったけど、自分も特に子どもに対して、少なからず支配しようとしていないか。

こういう点でもこの映画はゾクッとさせられる…


最後、彼らはあんな事件を起こすけど、きっとあの時間、3人「だけ」はとても「シアワセ」だったと思う。

小春が教え、ヒカリが正しく答え
大悟が繰り返す「よく出来ました」
ある意味理想の形。

あれがリアルな事件ならば、
児童たちを消したところで
世界中の人を消せるわけなどないのだから、
すぐに彼らの世界は壊れ、これまでの全ては失われるに決まってるんだけれど。

何故か「胸糞悪い」で終わらないところは
この、家族のシアワセがあの瞬間に感じるからなのかもしれません。


児童相談所案件の虐待、
そんなレベルでなくてもギリギリのところで毎日踏ん張ってる親子はたくさんいる(これ、わたしも例外じゃない)

乗り込んで放送室ジャックする人はそんなにいないけども
皆モンペにはなりたくないと思ってるはずなのに
学校に過度な期待、要求をする人もさほど珍しくない
(大概自分がモンペだとは思ってない)

多分みんな表裏一体。
王子様みたいな人との結婚とは限らず
何かひとつ大きな幸せを手に入れても、それで人生ゴールではないし、
それを手にしてそのあとどう生きるかというのは誰しも考えなきゃいけないのだろうな。

とにかくぐるぐると考えさせられる作品です。
2回目3回目みたらまた気づきがありそうです…いきたーい。

演技初挑戦のCOCOちゃん、
芝居の巧みさではなくあの雰囲気、佇まいも含めての抜擢だと言うのが伝わりました。
芸達者な子役の子では出せないものがあったと思う。

癇癪を起こして大悟とやり合うところ凄かった。

太鳳ちゃん、変化が鮮やかだった…!
ラストシーンと冒頭、それから幸せいっぱいの表情を比べたら違う人かと思うほど。

オファーを断った理由、衝撃のセリフやシーンの事ではないと思う。
覚悟が必要だと思った、という部分。
小春がそこにいたるまでどう生きたかを太鳳ちゃん自身で初めは飲み込めなかったと言うことなのかなと思った。

小春を生きてくれてありがとう。


さて以下は完全なる田中圭推しとしての推しポイントです。

って言ってもですね。

ここまで書いて圭くんを思うより、
人として好きでない大悟の話をしてると全然気分はときめかない事に気づいたw

それくらい大悟だった。
とりあえず大ちゃんとは呼びたくないレベルw

そんな中でもですね、イチオシのセリフ

「疲れてるんだけどな…」

で甘い雰囲気になるのすごくない!??
っていうか小春の誘い方もさ!!!きゃわ!!

だいたいあそこで拒否られて気まずくなるやつなのに!!!

あんな甘々の「疲れてるんだけどな」聞いたことねぇなー!????と思いました。
あれはやばい。


あと大悟さん突然のメガネで登場ズルくないすか。
スマートすぎてどうしようかと思った。
あのビジュ好きです。

ダンス、意外と大丈夫だったw
心配するほど踊ってなか(以下略


『哀愁しんでれら』2021年2月5日(金)全国公開【ダンスシーン映像解禁】

裸で公園はやばかったけど、あれも仕方ない理由だったのねw
寒そうだから何かかけてあげたいけど小春も何も持ってなかったもんね。

前半の大悟は間違いなく救世主で王子様でした。

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